学術上の能力または研究業績に基づき授与される栄誉称号を学位と言い、博士は学位の最高位であり、博士号とは博士の学位のことです。
STAP細胞で話題になった小保方さんの博士号について、早稲田大学より「取り消しには当たらない」という発表がされました。
小保方氏の論文「学位取り消しに当たらず」
早稲田大学の発表
けっこう複雑なことを言っており、いまいちはっきりしません。
要するに「出すに値しなかったのは確かだけど、いったん出してしまったものを撤回するほどではない。」という感じでしょうか。
「博士号というのは何年大学に残るともらえるの?」と聞かれる時があります。
大学の上にある大学院に入って卒業すればもらえるみたいなイメージなんでしょうけど、学位について少し整理してみます。
学位の種類 | 授与される標準的な過程 |
---|---|
博士 | 大学院後期3年(博士課程) |
修士 | 大学院前期2年(修士課程) |
学士 | 大学 |
修士はあまりなじみが無いかもしれませんが、例えばMBA資格。これが修士に当たるものです。
大学4年と大学院5年の合計9年でやっと博士号に辿り着くという長い道のりが、それでも最短距離のようです。
大学4年通って卒業すると学士、そのあと大学院に残って2年で修士、さらに3年で博士ということになります。
実際には、取得ルートはそれほど単純ではありません。
日本の大学の場合、普通にまじめにやっていれば卒業できて、学士は自動的にもらえるものと言えます。
しかし博士号となると、各大学・各学部や専門・担当教授によって取得する難易度がかなり違います。
簡単にもらえるところもあれば、いくら頑張っても相応の基準を満たさないとダメで、最終的にかなりの学生が授与されないというところもあります。
大学院に残っていれば必ずもらえるものというわけでもないのです。
また、大学院に在籍せず、高いレベルの論文を書くことで授与される博士号もあります。
このケースは、かなり立派な業績とともにというのが一般的かと思います。
わたしは大学に残って勉強する余裕が無かったためすぐに就職したのですが、開業した後になって、働きながら博士号を取りたいと思いました。
何人かの大学関係者に問い合わせたところ、「忘年会と新年会は必ず出てください。」みたいなゆるいところもあれば、「そんなに簡単に考えないで欲しい。大学に毎日通う気持ちじゃないと難しい。」というようにたしなめられるところもありました。
大学や担当教授によっても、ほんとにいろいろなんですね。
文系の学部、例えば法学部や経済学部などでは、博士号を持っているのはとてもすごいことです。
有名な経済学者などの肩書にも、「単位取得退学」という経歴をみかけます。
博士課程の授業単位はすべて取得したけど博士論文提出の条件が不足だったり、認められる博士論文が完成できず、そのままで博士課程を修了して社会に出てしまう。こういう時に、単位取得退学というものになります。
文系の博士号は、一般的に言うとなかなかもらえないのです。
あくまで一般論ですが、理系では大学に残って大学院に入れば、2〜3年で博士号を取得して卒業となる場合が多いです。理系は博士号を持ってる人がたくさんいるので、それほど「すごい!」というイメージではないですね。
小保方さんも、それほど緊張感を持って博士論文に取り組んではいなかったのかもしれません。
このように、博士号の価値は、大学や学部などの環境によって異なり、特に文系と理系では大きな差があります。
戦前においては原則として博士号授与機関は原則として帝国大学に限られ、その希少性から「末は博士か大臣か」と詠われほど市井において高く評価され、学位の保持者に対しては敬意が表されていた。
という博士号ですが、現在では、その価値は様々なようです。
文系の方や博士号を取得する難易度が高い環境にいた方からすると、今回の小保方さんのケースは「許せない!」と感じるでしょうし、そうでもない環境だった方からすると「あるある」という感覚になるかもしれません。
博士号の価値が大学などで違うとなると、今回の早稲田大学の問題は、残念ながら早稲田の博士号の価値を下げてしまったということになるのでしょう。
早稲田の学位を持っている方には、たいへんお気の毒な話なのでした。