歯科医は「見ず知らずの他人」

ライオンが日本・アメリカ・スウェーデンの3カ国を対象に”オーラルケアに関する意識調査”を行いました。

歯科医は米国で「憧れの人」、日本で「●●な人」 – 世界オーラルケア調査(マイナビニュース)

その結果を見ていくと、日本の予防歯科に対して心配な気持ちが出てきます。

特に「予防歯科」(ムシ歯などにかかってからの「治療」ではなく、かかる前の「予防」を大切にする考え方)の認知度が低いことが気になります。


「予防歯科」について、現在どの程度取り組んでいますか?

日本では、半分以上の人が予防に取り組んでいないようです。

そして、歯科医に対する意識を見てびっくりしました。
歯科医は「見ず知らずの他人」だそうです。


歯科医はどのような存在ですか?

アメリカの結果と比べるとショックですが、よく見ると、アメリカ同様の歯科医療先進国スウェーデンでは似たような結果です。
単にお国柄ということになるのでしょうか。

日本の場合は、治療に時間的余裕がなく、患者さんと十分なコミュニケーションが取れない傾向があります。
できるだけゆったりと治療にあたり、患者さん一人ひとりと十分会話ができるように心がけて、「頼れるパートナー」になれるように頑張りたいと思います。

喫煙によって歯周病の危険性はなんと4倍に

杉並区の成人歯科健診の質問項目に、たばこと歯周病の関係に対する質問項目があります。

たばこを吸うと歯周病にかかりやすくなるかどうかで、
「どちらともいえない(わからない)」と回答する方が意外に多いので、説明したいと思います。

喫煙によって歯周病の危険性は4倍になると言われます。

また、喫煙者は非喫煙者よりも歯周病になる年齢が低く、病気の進行も速く、治療の効果が上がらないことがわかっています。まさに三拍子そろってしまいます。

歯周病の危険性が高いと指摘された方は、禁煙したほうが良いです。
約10年禁煙すると、喫煙しない人と同じになります。

さらに喫煙者の歯ぐきは、ニコチンの血管収縮作用によって色が紫になって赤い炎症が見えにくくなることで、歯周病の発見が遅れがちです。
喫煙される方は、定期健診をこまめに受けて、歯周病になっていないか、悪化していないかに気をつけてください。

妊婦の歯周病で早産が約7倍になる

近ごろ歯周病と全身疾患の間に関連性があるのではないかといわれています。
歯周病に関与している細菌が、肺炎・心疾患・糖尿病などに悪影響を及ぼしているのではないかという研究がさかんに行われるようになり、世界中で注目されるようになりました。

実は、早産や低出生体重児にも悪影響を及ぼしているのではないかといわれています。

実際にどういう研究結果があるかというと、

歯周病にかかった母親は、かかってない母親に比べて、早産・低出生体重児の可能性が約7倍も高かった。

また、

歯周病の治療を受けた妊婦は、受けなかった妊婦に比べて、早産・低出生体重児の割合が約1/5であった。

という報告もあります。
因果関係は、きちんと科学的に証明されているわけです。
妊婦の方にも関心を持ってもらう必要がありますね。

杉並区では、妊婦のための歯科健診に積極的に取り組んでいます。
妊娠期間中に、検診を無料、クリーニングを300円で受けられます。

妊婦歯科健康診査

杉並区の妊婦歯科健診は、全国的にみても、とても良くできた制度です。

ほとんどの方は大きな問題がなく、クリーニングだけをして、妊娠期間や産後の歯の手入れや、生まれたあとのお子様の歯の手入れについてお話させていただくことになります。

こちらも併せてお読み下さい
妊娠中の歯科治療

虫歯や歯周病はうつるのか

「虫歯や歯周病はうつるんですか?」

よくされる質問ではあるのですが、非常に専門的な説明になってしまうので、簡潔に答えるのは難しいです。

虫歯と歯周病、それ自体がそのままうつることはありません。
うつるのは細菌なのですが、夫婦間で同じDNAの細菌が検出されたという報告がありますので、細菌の人から人への移動はあるのでしょう。
しかし、虫歯や歯周病は、細菌がいるからというだけでは発症しません。

細菌が移動して、定着する。そして増殖する状態になる(ここでやっと感染です)。
そのうえで、食事、遺伝的要素、そして唾液や歯などの条件がそろった時、初めて発症するといわれています。

口の中の細菌については「いす取りゲーム」と説明されることがあります。
大人になるまでに、細菌のパワーバランスが決まっていきます。
つまり、いすがうまっていくのです。
大人はすでに、いすはほとんどうまっています。
子どもはまだ、あいているいすが多いので、細菌が座る場所があるという意味です。

ですから、まだ菌が少ない乳幼児と成人では、条件が違います。
「うつる」ということに関して言えば、大人の場合は、あまり気にしても意味がないでしょう。
乳幼児に関して言うならば、接するご家族の口の中の状態が良いかどうか、意識はしたほうが良いかもしれません。

遺伝的要素も関係しますから、お父さん、お母さんに虫歯や歯周病がある場合は、お子様のリスクに気をつける必要があります。

99%の検査のほんとうの的中率

ある検査で、病気の人が受けたら99%の確率で陽性(病気があるとの判定)と出る検査を、「精度99%の検査」と表現することがあります。

Q、1万人に1人が罹患している病気で、精度99%の検査を行い、もしも陽性と判定されたら、ほんとうに病気にかかっている確率は何%でしょうか?逆に病気にかかってないのに陽性が出てしまう確率を0.1%とします。

A、この質問の答は、「約9%」です。

医学的知識もしくは統計の知識の無いほとんどの人は、「99%」と答えたと思います。

検査で一番大きく影響する要素は、実は病気の確率です。
例えば、この病気が実は1000人に1人の病気だったら約50%。100人に1人の病気なら約90%が実際に病気にかかってる確率になります。

病気の検査や統計については、このように注意しないといけない数字のマジックがあります。
気をつけないといけません。
原発事故に伴う病気の話や、最近話題の遺伝子診断の話のときは、少々心に留めておいて、懐疑的に聞くことをおすすめします。

こどもの矯正

長男の歯の矯正を始めました。小学校3年生です。

あごが小さく、真ん中の歯が開いています。

子供の矯正は、咬合誘導と呼ばれ、成長を利用して行います。
そのため、無理なく自然に歯並びを整えることができます。

成長期が終わってから行う成人歯列矯正に比べ、人によってはだいぶ大がかりなことが楽に出来るので、将来の矯正の費用を減らしたり、期間を大幅に短くしたりできます。

当院では、成人矯正は50-150万円くらい必要ですが、
こどもの咬合誘導は、終わるまでで総額30-40万で行っています。
お子様に、有利な条件ではやく始めていただきたいからです。

こういう装置であごを大きくする治療を行っています。

最近のこどもは、あごが小さくなり、ほとんどの子どもはきちんと歯が入りきりません。

この装置は、現在だと80%くらいのこどもには使った方が良いと言われています。
短期間で済みますし、意外とこどもは気にしません。

10日ほどで、けっこう真ん中の歯が閉じてきました。

プロとアマの違い

「専門家は欠点があってはいけません」
「プロとアマの違いは苦手があるかないかです」

と将棋の元名人、米長邦雄さんが著書に書かれています。
わたしも同じ意見です。

よく、長所を伸ばしたほうが良いか欠点を補ったほうが良いかという議論がされます。
子供の教育とかいった場合は確かに悩むところでしょう。
しかしプロというものを考えた場合は、欠点があってはなりませんから、まず苦手なことをなくすことのほうが重要だと思います。

すべてのことをバランスよく行えるという最低限のことを満たした上での長所であり、苦手なものがあっては、たとえば治療計画が偏ってしまいます。
一番良い方法が選択されないケースが出てきてしまうと思うのです。

インプラントが適しているケースで、自分自身でインプラントが行えないといった場合は、出来る先生に紹介することになると思います。
しかし、自分でなんとか治療したいと思うのは当たり前ですから、どうしても義歯やブリッジに説明が偏ることになると思います。
さらに、有りもしない理由でインプラントを否定したりすることにもなりかねません。
専門家として、そういうことはあってはならないと思います。

また、インプラントを行うのには、歯周病の治療が完璧に行えなくてはなりませんし、マウスピース矯正をするには、表側や裏側に装置を付けるやり方もできるべきだと思います。

最も適した治療法を偏りなく説明する。
そのために、専門家として苦手はあってはなりません。