新しい記事も書きました。(2015.10.5)こちらです。
以下(2015.2.4)アップの記事です。
今回は、長くなって難しい話になっちゃいました。
政治の話なので、興味がない方は避けていただいたほうが良いかもしれません。
11年前の2004年、日歯連事件というものがありました。
日本歯科医師連盟による診療報酬を巡る汚職事件や日歯会長選に絡む横領と政界に絡む選挙買収や闇献金が発覚。
日歯連幹部6人、中医協委員2人、自民党国会議員2人、自民党派閥会計責任者、地方議員5人ら計16人が起訴され、全員の有罪が確定した。
(wikipediaより)
相当な大騒ぎになり、これをきかっけに失脚した大物議員が出て、政界にもたいへん大きな影響がありました。
診療報酬にも大きく影響したようで、次の回の改定で歯科の点数が大幅に下がり、経営が苦しくなった歯科医院が急増しました。
さて、どこかで聞いたことあるような記事が、昨日からまた報道されています。
全国の歯科医で組織される、政治団体・日本歯科医師連盟が、自民党の石井 みどり参議院議員の後援会に対し、民主党の西村正美参議院議員の後援会より、法定上限を超える迂回寄付をしていた可能性があることがわかった。
日歯連の会計責任者は、「法的に問題はない」と述べた。
政治資金に関する事件や疑惑などは、最近特に多いですね。
東京都知事だった猪瀬直樹さん、みんなの党の渡辺喜美さん、自民党の小渕優子さんなどが取り上げられました。
実は、政治資金の法律について多少詳しいのです。
みなさんが理解するのに多少の参考になることだけ書いておこうと思います。
日本歯科医師連盟(日歯連)は、どういう人が入るのかというと、以前は歯科医師会に入る人は自動的に一緒に入っていたものです。
わたしも、気づかなかったのですが、歯科医師会に入会するのと同時に入会していました。
政治団体だということも、実は全く知りませんでした。
実態は、歯科医師会の政治部門みたいなものだったのでしょうか。
自民党支持(与党支持?)の利益団体(圧力団体)だと思います。
現在でも、選挙の時には自民党候補者支持の連絡が「歯科医師会から」来ます。
そういうわけで、歯科医師のかなり多くが入っている団体で、資金も歯科医師が出しています。
しかし、ほとんどの歯科医師は、政治のことを特に意識せずに所属しており、歯科医師会の会費の一部のような感覚でお金を払っています。
11年前の事件のあと、「政治団体に自動的に入っている」ことに批判が大きくなったからなのかはわかりませんが、歯科医師会から「お尋ね」が来たので、わたしはその時に一旦退会とさせて頂きました。
今回のことで面白いのは、迂回した政治団体が民主党の西村正美参議院議員の後援会で、自民党の石井 みどり参議院議員の後援会に渡ったということです。
民主党から自民党へ寄附。普通はありえないから、どういうことかは想像付きますよね。
もうひとつは、まさについ最近、日本歯科医師会の会長選挙が始まったところだということ。
なんでこのタイミングなんだろう。内輪もめ?それとも、偶然でしょうかね。
しかし、今回のは所詮、身内同然の「族議員」に選挙資金を回しただけで、いわゆる「汚職」とは違うということです。分類からすると、個人の選挙違反ということになります。
11年前の事件と違うのはその点であって、まわりの議員にさらに波及したりはあまり考えられません。マスコミなどが盛り上がらないのはそういうことなのです。
さて、「政治資金収支報告書」というのがこの種の事件では毎回出てきます。
確定申告のようなもので、もっと厳密っていうイメージを持つ方も多いと思うのですが、違反すると逮捕される可能性があるものなのに、たいへんアバウトな報告書です。
こんな感じのです。
厳密には単年度で収支が合わなくても良く、どこからお金が入ったか、どこに使ったのかを報告するだけです。
実は、これは誰でも見ることができます。
国会議員の関係団体なんかは、総務省のホームページに公開されているくらいです。
だから、あら探ししようと思ったら、政治関係者や警察じゃなくて、一般の人でも十分できるんですね。しかも家に居ながら。
小渕優子さんの時は、多分、誰かが収支報告書を一生懸命読んで、おかしなところを見つけてチクったんでしょう。
全く関係ない人は調べないでしょうし、利害関係がある人が調べたのだと思います。
資金の出どころや資金の使途に問題がある(贈収賄になるなど)場合は当然ですが、それ以外に「金額」も問題になります。
下の図は、東京都選挙管理委員会のホームページに掲載されている書類から引用しました。
このように、政治団体の間の寄附は上限が5000万円に制限されています。
日歯連という政治団体から、もう一つの政治団体である石井みどりさんの後援会には5000万円しか渡せません。
そのため、西村正美さんの後援会に5000万円寄付した。別の政治団体だから、そこからなら石井みどりさんの後援会に5000万円渡せます。
これ、法律的にはたぶん大丈夫なんですよ。きっと。
11年前の事件は、寄附を隠しちゃって報告書に載せなかったことがそもそも違法だったのです。だから「ヤミ献金」と言われました。
今回は、収支報告に記載してるようですから。
ただ、政治資金規正法の法律の精神からするとちょっと。なんで金額の制限があるのかということですね。
ここで、後援会ってなんだろうなという人もいると思うのですが、これがまたややこしくて、議員や候補者を応援する人が作った団体で、建前上は本人の管理とは違うという扱いになります。
議員とは違う他人が管理する団体で、つまり、お財布も別ということなんですが、実質的な後援会の資金管理は議員本人ということがほとんどなのが実情です。
これ以外に、国会議員の場合はほとんどがどこかの政党に所属しているんですが、その政党の「支部」というものを管理していて、それも本人や後援会とは違う扱いです。
図をよく見ていただけるとわかりますが、政党には、団体から年間1億円動かせます。
こんな感じですから、政治資金規正法は、解釈次第でどうにでもなるし、「法的には問題ない」というコメントが頻発するようになるのです。
下に、議員や候補者本人の場合の資金の流れを参考に載せておきます。
本人は、政党や後援会など政治団体以外の利益団体、つまり会社などからの寄附は一切受け取れません。だから、政党支部を利用してお金を受け取ります。そこから無制限で受け取れますから。そういうのも「迂回」と言ったらそうなるのかもしれませんね。