海老沢歯科医

日本歯科医師連盟迂回献金事件

先週逮捕者が出て、日本歯科医師連盟の迂回献金問題は新たな局面を迎えました。
わたしは2月にブログ記事を書いていたのですが、ここ数日はかなりのアクセスがありました。

日本歯科医師連盟の迂回献金疑惑(2015.2.4アップ記事)

当時はかなり気楽に書いていましたが、逮捕者が出てしまった現状でも当時と認識は変わっていません。
この事件は、所詮「選挙違反」であって汚職ではなく、それほど大きな事件ではないと思っています。
しかし、あの東京地検特捜部が関わった以上、何か成果をあげる必要はあったということです。

歯科医をやっていて、こういう事件や政治的な話を書くことに大きな抵抗感はあります。
ただ、こうなってくると補足したい部分も多少出てきました。こわごわとこっそり書いておこうと思います。
皆さんがニュースを見て疑問に思いそうなことをいくつかあげて自分の感想を書いてみます。

 

歯科医師会と歯科医師連盟の関係

歯科医師会の政治部門のようなもの。建前上別の組織だとしても、歯科医師会の一部といっても言い過ぎではないと思います。
前回の記事参照

 

議員と歯科医師連盟の関係

どこかの政党の議員の誰かを応援するかというより、候補者の段階で誰を出すかということを決めてると考えられます。
「歯科医師連盟から候補として誰を出すか」というような関与の仕方でしょう。ですから、議員は元々「身内」です。
当然選挙は丸抱えで、候補者が自己資金を出すとかいう概念は全く無いはずです。

政党の公認も、「歯科医師会の代表」としてその時期に有力な政党に働きかけて、歯科医師会(連盟)として取ってると考えられます。
だから一人は自民党でもう一人は民主党だったわけで、今回のことで政党の違いはそれほど重要なことでは無いのです。

 

なぜ迂回してまでお金を渡したのか

お二人とも参議院比例区ですが、選挙区が全国です。
まともに選挙運動をすると大変莫大な費用がかかります。ポスターを張るだけでも想像を絶する金額がかかります。
よく「いったい、選挙っていくらかかるのか?」と聞かれますが、ルールが無かったらいくらでもつぎ込めるし、つぎ込むほど当選確率が上がるのです。選挙とはそういうものです。
今回の問題のきっかけは5000万円プラス5000万円で合計1億円のお金から始まりましたが、知名度の無い人が参議院全国比例でまともに当選を狙うとすると、そのくらいは平気でかかってくると思います。
5000万円じゃ選挙費用が足りないから、身内である候補にどうやって渡すかということを単純に考えたわけですね。

 

総務省に確認していたのになぜ逮捕されたか

総務省に確認を取っていたから大丈夫だという認識だったと幹部が述べているようです。
これは、言い訳に聞こえるかもしれませんが、わたしはあり得る話だと思います。

そもそも総務省は、選挙に関わる手続きや記録をしたり選挙を実際に行う組織で、「選挙管理委員会」を管轄している官庁です。
選挙違反を取り締まるのはあくまで警察や検察であって、総務省ではありません。

実際に「選管」が置かれるのは都や県だったり区や市町村だったりします。
選管で質問をすると、「一般論としてこうなっています」みたいな回答は来ますが、「大丈夫です」とはなかなか言わないはずです。

わからないことは、「総務省に確認します」と言って上級官庁に問い合わせが上がりますが、そこでも事実の提示だけで、「ご判断はお任せします」みたいな歯切れの悪い回答が返ってくることが多いのです。
当然、書式とか手続きなど「法文」や「通達」に明示されていることははっきり教えてくれるのですが、あくまで法の内容や過去の事例だけで、裁判所みたいな仕事じゃないので、ルールの解釈に関する最終判断は自分でするしかありません。

つまり、解釈次第でいろいろなことで逮捕されるリスクは残ります。
立ち小便やスピード違反はいけないことで、逮捕される可能性があることは理解できると思うのですが、大部分の人は「そのくらいで逮捕は」と感じると思います。
そういうのと一緒にするのもと思いますが、同じような認識だったのではないかと想像します。

 

おおまかに言って何が悪かったのか

ルール違反であるという判断がくだったのでしょう。
道義的には、正直よくわかりません。
現在までの報道の内容だけ見ると、わたしはまだ、これだけ大騒ぎになって逮捕者が出たことには首をかしげています。
もっと奥深い「狙い」や大きな犯罪が影に隠れている可能性は十分ありますが。

「悪い」というのは、「ルール違反だから」とか「道義的に」とか「正義では」とかいろいろな意味合いがあります。
しばし大騒ぎだった安保法制のことでは、憲法違反だとか違憲じゃないとかいうことが専門家の間で議論されたりしました。
法に書かれていることをどう解釈するかという問題は、簡単ではないのです。

わたしの個人的で独断的な感想では、今回逮捕された歯科医師連盟の幹部たちは、道徳的な「悪気」は無かったのではないかと思います。
ただ、行為が定められたルールの範囲内であるか、もし範囲外であるならごまかせるかどうか、ということは多少グレーな気持ちで考えて処理したはずです。
でも、よもや逮捕までされるとは夢にも思っていなかったのではないでしょうか。

政治資金規正法や公職選挙法といった法律は、元々「狙い」があって定められたはずです。
正義ということでは、その法の精神にのっとって「違法」だったということは確実だと思います。

しかし、実際にはもっとグレーよりブラックに近いことをしている政治家は他にもたくさんいますよね。
そういう政治家が逮捕されない状況を考えると、ちょっとガードが甘そうな捕まえやすいところを狙った感があり、アンフェアなものを感じる部分もあります。

明確な違法行為というものは仕方がないのですが、みんなが「大丈夫かな?」と思ってやってるグレーな行為をどう扱うかということは、最終的には「正義とは何か」ということに行きつきます。
これは法哲学みたいなもので、時代や場所、価値観などによって判断が変わったりするものでもあるのではないでしょうか。

ちょっと前、選挙うちわの問題がありました。
同じこと書いてあっても柄が付いていないうちわであればビラ扱いでセーフ、付いていたらうちわだからアウトって(笑)

なんだそれっていう話なんですが、選挙の話っていうのはそういうのがとっても多いんです。
酒は選挙の時に出してはダメです。コーヒーは現在良くなってますが昔はダメだった。お茶は昔から出しても大丈夫なようです。
お茶菓子は現在は良いのですが、バナナはどうでしょう?ケーキは?
わかりますか?そういうの。
選挙のルールの多くは正義で判断するものではなく、ルールを確認するものなのです。
ルールは頻繁に変わります。今回のもそれに尽きると思いました。
金額が世間的に見て大きいと感じると思いますが、それも政党助成金を受け取って政党から議員に流れている金額と比較すれば、それほどとは言えないと思います。
昔ほどではないとしても、今でも政治のまわりには大きなお金が動いているのです。

選挙にものすごくお金がかかる現在の選挙制度もそうですし、昔ながらの利益誘導を政界に対して働きかけるというやり方を未だに続けている歯科医師会はどうなの?感は確かにあります。
これを機会に何か変わってくれると良いなと思います。

 

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