海老沢歯科医

簡単に人を信用するとエビデンス軽視になる 

ショーンKさんの経歴詐称。ハーフなのもウソとかいう話もあり、すごすぎてちょっとおもしろかったです。
人柄が良いことで擁護する意見があるんですが、そういう問題じゃないですね。
学歴の話ともぜんぜん別の話。コメントなどで出される情報の信用性に関する話だと思います。

「ハーフで海外の大学を卒業してるから、語学も堪能で、英字の情報も読み込んでいるだろう」
「ハーバードでMBA取ってるから、国際的な経営感覚のある話をするだろう」
などということを、勝手に想像するわけです。

経歴に気を配っていなかった人も、少なくとも、ニュース番組でコメンテーターをしてる人だから信用できると判断します。
しかし、経歴を詐称していなかったら、果たしてコメンテーターに採用されたでしょうか。
ショーンさんに対し、ニュースを見ている人は、ある程度の信頼をもって見ていた。
その中には、経歴や見た目があったことは確実です。

 

情報の確認が面倒だから人を信用することを選ぶ

多くの方は、人やポジションを信用して、情報の確度を無意識に判断しています。
「誰が言ったか」が重要です。
歯科医だからこそ、歯に関してだけは、わたしの話も信用してもらえます。

今回の話は、人の信用を判断するための基本的な部分を偽ったということで、単純にルール違反を問われる話です。
本質的には、小保方さんの騒ぎとも似ていると思います。

「間違っていないもの」として信用していた部分にルール違反があったから、すべての関連情報を疑わなくてはいけなくなった。
人々は拠り所を失い、判断しなければならないストレスを感じ、信用した自分の自尊心に傷をつけたのです。
人柄が良さそうだったとか、発していた情報や仮説が正しかったかどうかなどは、この際、あまり関係ないでしょう。

人は自分の目で判断すべきで、経歴は関係ないという方は、ご自分の判断で大丈夫だと思います。
しかし、多くの人は見た目や経歴で人を判断するのがやっとのはずです。そこまで注意深く見ていられません。

 

さて、わたしたち歯科医にも、論文などの科学的根拠に関する情報の選択はとても重要なことです。
たくさんある情報から、少なくとも現在正しいとされているものや、より確からしい情報を取捨選択して、診療に当たります。

多くの歯科医師が、その判断をどう行っているかも、実はテレビの視聴者と似た部分があるのです。

 

理想的なエビデンスの判断

医療情報の質を判断するときに、エビデンスレベルというのがあります。
難しい単語が並んでいますが、ここで注目してもらいたいのは、専門家個人の意見に関してのエビデンスは、一番下であるということです。

 

(高いエビデンスレベル)
 1a:ランダム化比較試験のメタ解析
 1b:少なくとも一つのランダム化比較試験
 2a:ランダム割付を伴わない同時コントロールを伴うコホート研究
 2b:ランダム割付を伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究
 3 :症例対象研究
 4 :処置前後の比較など、前後比較や対照群を伴わない研究
 5 :症例報告
 6 :専門家個人の意見、専門家委員会報告
(低いエビデンスレベル)

 

診療にあたって、わたしたちが最も正しい判断をするためには、

◯関連する論文をすべて読む
◯エビデンスレベルを検討し、最も評価すべき情報を正しいものとする
◯あいまいな部分がある場合は、他の研究者とディスカッションし、確度を深める

等のプロセスが必要になります。

たとえ有名な先生が、教義(ドグマ)として「こうするべきだ」と発言したとしても、根拠が示されなければ、エビデンスという立場からは盲目的に信用してはいけないのです。

 

実際には

しかし、研究者でもない限り、そこまでするのはまず不可能です。
英文のものも含めると、とんでもない量ですから、何年もかかってしまいます。
ですから実際には、信用できるその分野の専門の先生の意見を重視することが多くなります。
信頼できる先生は、全部読んで正しく公正に判断しているだろうと。

この部分は、みなさんがテレビに出ている人などの言うことを判断するのと一緒です。
一番良い方法でないとしても、情報の収集を現実的な時間的コストに留めるために、「信用できる人を選び、その人が正しいと思うと言っていることを、正しいとみなす」ことが多くなるのです。
結局、多くの場合、一番重要な判断は「誰を信用するのか」ということになってしまいます。
論理的な話をしているかや人間関係なども重要です。しかし、専門家には、経歴や肩書もより大切です。
「信用される側の人」は、神のように誠実で勤勉である必要があると、わたしは常々考えています。

もちろん自分自身が勉強していなければ、信用できる人を判断する根拠すらわからないですし、本当に信用できる先生を探すのは簡単なことではありません。
日々自分でも努力して、研究会などにも参加せざるを得ないことに変わりはないのですが…

 

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