海老沢歯科医

保険でほぼ白い歯に出来るようになりました(一番後の歯を除く)~ウクライナとロシアの戦争のせい?~

4年前の2018年に「保険で多くの歯が白い歯にできるようになりました」という記事を書きましたが、この4月より、ほとんどの保険の金属を白い歯にすることができるようになりました。
これまでは、小さいはめ込み式の修復物は金属で入れるしかなかったのですが、小さい金属も保険で実用的な白い歯に出来ることになりました。

セラミックの歯ではありませんが、以前まで使われていた実用性が無い「弱いプラスティック」ではなく、強化プラスティックの丈夫なものです。

 

保険で白い歯を入れるための基本的なルール

1、前歯と小臼歯(5番目までの歯)は基本的に白くできる
2、一番後の奥歯(7番目の歯)と親知らずは白い歯を入れることはできない
3、一番後の奥歯が全部残っている場合(上下左右4本)は1個前の奥歯も白い歯にできる

 

もちろん、セラミックの歯が一番です。
当院に導入されている「セレック」という機械でセラミック修復物を即日製造して、その日のうちに接着する治療法が、段違いに長持ちします。歯を大切にするためには一番良い方法です。
材料もセラミックは一番良いですが、材料以上に、歯を削ってすぐ接着するという効果が、実はとても大きいのです。
一度はセレックの説明ページを読んでいただきたい。

セレックの説明ページ

しかし、保険外だと、やはりある程度の費用が必要になりますから、どうしても保険で治療したい方もいらっしゃるでしょう。
次善の方法ではありますが、「ノンメタル治療」を心がけている当院では、金属でなおすよりはずっと結果が良いと、わたしは考えています。強度も以前のものとは段違いですし、見た目も全然違いますしね。

 

口の中に入っている金属は全部外してやり直したい

 

これが本音ですから、大部分が保険で可能になったというのは、わたしにとって大変重要なことでありました。

 

なぜ急に白い歯が保険導入されたのか?

これについても、ご説明しておきたいと思います。


(「ヤマキンニュース」より引用)

 

数年前から、歯科の保険で使用している金属(金銀パラジウム合金)の値段が高騰していました。
理由はいくつかありますが、ほぼ5倍程度にまで上がってきました。
金やプラチナよりずっと高くなってしまった。

昭和の時代に、「安い」という理由だけで、日本だけで口の中に入れられていたパラジウム合金ですが、実はパラジウムは希少金属です。
パラジウムは、自動車の排気ガスを取り除く触媒として使われていたため、自動車の普及と環境問題から、どんどん使われるのに、産出量はその割合ほどは多くならなかったのでしょう、徐々に値上がりしました。

近年では、円安など様々な理由で特に急騰しています。そのため、金属の修復物を入れたときの3割負担の一部負担金も当然高くなっていて、1本歯を入れるのに負担金だけで数千円以上かかるようになることにもなっていました。
残りの7割を支払っている保険側も、どんどん支払いが大変になり、なんとかしないといけない状況に。

そんな中、ウクライナで戦争が始まってしまいます。実はパラジウムという希少金属の産地の大部分がロシアだったため、ここ数か月は、特に急激に値段が上がっていきました。現在の値段は1gあたり1万円以上です。

そして、今回、技工料や金属代などを考えると、ここで白い歯にしたほうが値段も安くなってしまうと言うことになったのだと思います。

 

なぜ今まで白い歯が保険導入されなかったのか?

今回認められた白い歯は、CAD/CAM冠と言われるもののインレー版です。インレーとははめ込み式の小さい修復物のこと。
どうやって作るかというと、工業用に作られてとても強度が高いブロック型のプラスティックを、コンピューターで設計したプログラムによって機械で精密に削って作ります。最近やっと普及してきた方法です。

こうやってできたものは、かなり強度がありますが、普通のセメントで付けると噛む力で割れてしまいます。
歯にしっかり接着することで非常に強くなるのです。この「接着」技術は、材料の進歩とともに、歯科医師の研究努力により進歩してきました。

 

簡単に言うと、勉強している先生と勉強していない先生の技術の差がとても大きく、ある先生は「割れるからダメ」とか「取れるからダメ」といまだに言いますし、勉強熱心であたらしい材料をすぐ買う先生は「十分実用的」と言うことになります。

 

また、型どりしたものをスキャナーでスキャンしてデータとしてコンピューターに取り込んでいくわけですが、そんなところにも技工士さんの人件費が発生しますし、機械がかなり高額ですので、技工所のコストとして跳ね返り、技工料も高くなります。総合的に考えると、多くの歯科医院では、金属で作った方が白い歯よりもずっと安かったのです。

セレックも、セラミックを材料として使いますが、基本的に同じように作ります。
院内に口の中を直接スキャンできるスキャナーを持ち、設計技術がある歯科医師からすれば、その材料がプラスティックになるだけで、簡単なことです。

しかしながら、スキャナー、ましてや削って修復物を作る機械を所有する歯科医院は限られますし、これらを外注するとコストがずっとかかります。接着技術の問題も考えると、そう簡単に金属のものから変更しにくい歯科医院もとても多く(今回の改正後でも導入できない歯科医院は多いと思います)、保険適用にはハードルがあったのです。

今回、金属代の急騰で、背に腹は代えられずで保険導入されたことも、なかなか皮肉なことだなあと感じます。

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