睡眠時無呼吸症候群は怖い!放置の危険と歯科で作るマウスピース
読了目安 約8分この記事は時点の情報です。 保険適用で作製するマウスピースの診療報酬と負担費用は変わることがあります。
この記事の要点
睡眠時無呼吸症候群の放置は心疾患や脳卒中などの重篤な全身疾患を引き起こします。小顎傾向にある日本人は痩せ型でも発症しやすく、軽症から中等症であれば医科の紹介状により歯科で費用を抑えたマウスピース治療を保険適用で受けることが可能です。
- 未治療のまま放置すると国内外の疫学調査によると脳血管障害の発症リスクが最大約5倍に上昇します
- 医科の紹介状があれば歯科でのマウスピース作製は3割負担で約1万円です
- 残存歯が極端に少ない場合や重度の顎関節症では装置の固定ができません
家族にいびきや無呼吸を指摘され、将来の心筋梗塞や日中の居眠り事故に強い恐怖を抱えている方へ向けて書きました。治療が必要だと分かっていても、大がかりなCPAP(鼻マスク)装置を毎晩着ける生活には抵抗があるかもしれません。
軽度から中等度の症状であれば、歯科医院で作る専用マウスピースで十分に気道を広げられます。
この記事を読むと、放置する危険性の根拠から、医科と連携してマウスピースを保険適用で作る手順と費用まで把握でき、大がかりな装置を使わずに治療を始める最初の一歩が分かります。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まる無呼吸や呼吸が浅くなる低呼吸が断続的に繰り返され、低酸素状態による日中の強い眠気や全身の血管系疾患リスクを招く病態のこと。
睡眠時無呼吸症候群はなぜ怖い?放置による全身疾患と事故のリスク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が本当に怖い理由は、日中の眠気だけにとどまらず、命に関わる全身疾患や重大な事故を招く点にあります。睡眠中に何度も呼吸が止まると、体内の酸素不足と交感神経の緊張が毎晩繰り返され、血管や心臓へ深刻な負担をかけ続けます。
「ただのいびき」「睡眠不足のせい」と見過ごしていると、自覚症状がないまま静かに血管が傷つき、取り返しのつかない事態を引き起こしかねません。
心筋梗塞・脳卒中などの血管障害リスクが跳ね上がる理由
睡眠中に呼吸が止まると、血液中の酸素濃度が急激に低下します。脳は酸素不足の危機を察知して覚醒を促し、夜間にもかかわらず交感神経が強く興奮します。
この夜間の血圧急上昇と低酸素状態が繰り返されることで、血管の内壁が傷つき動脈硬化が進むのです。日本循環器学会のガイドラインによると、健常者と比べた各疾患の発症リスクは以下の通りです。
| 合併症の種類 | 発症リスク(健常者比) |
|---|---|
| 高血圧 | 約2〜3倍 |
| 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症) | 約2〜3倍 |
| 脳血管障害(脳卒中) | 約3〜5倍 |
睡眠をとっているはずの時間に心臓や血管を酷使するため、突然死の引き金になるケースも珍しくありません。
居眠り事故のリスクと社会的な責任
無呼吸によって深い睡眠が奪われると、日中に突発的で激しい眠気に襲われます。未治療の患者における交通事故の発生率は、一般ドライバーの約2.5倍から最大約7倍に達します。
これは個人の体調不良にとどまらず、重大な社会的責任を伴う問題です。道路交通法において、睡眠時無呼吸症候群は免許取得時や更新時の質問票で申告すべき対象疾患に指定されています。
症状を自覚しながら未治療のまま運転し、居眠り運転で人身事故を起こした場合は、自動車運転死傷処罰法の危険運転致死傷罪などに問われる可能性があります。適切な治療を受ければ運転の継続が可能です。
太っていなくても危ない日本人の骨格的特徴
欧米では肥満による喉まわりの脂肪沈着が主な原因とされますが、日本人をはじめとするアジア人は、痩せ型や標準体型でも多く発症します。原因は骨格の違いだからです。
日本人は顎の骨が小さく、下顎が後方へ引っ込んでいる骨格が多くみられます。顎が小さいと、口の中に舌を収めるスペースが十分に確保できません。
その結果、就寝時に仰向けになると重力で舌が喉の奥へ落ち込み、気道を塞いでしまいます。体型に関係なく、いびきを指摘される方や起床時にだるさを感じる方は、顎の骨格的な影響を疑う必要があります。

軽度から中等度なら歯科で治療可能!マウスピースとCPAPの違い
睡眠時無呼吸症候群は、軽度から中等度であれば歯科で作るマウスピース(口腔内装置)で気道を広げて症状を抑えられます。重症では空気を送り込むCPAP(シーパップ)療法が標準ですが、持ち運びやすさや使い勝手の良さからマウスピースを選ぶ方が増えています。
マウスピース(口腔内装置)が気道を広げる仕組みと効果
歯科で作るマウスピースは、就寝時に下顎を数ミリ前方へ突き出した状態で固定する装置。下顎と一緒に舌の根元が前方へ引き上げられるため、気道の狭窄や閉塞を物理的に防げます。
「マウスピースで病気自体が治るのか」は、診療でもよく受ける質問。結論からお伝えすると、マウスピースは装着中の無呼吸を防ぐ対症療法であり、骨格や体質を根本から完治させる器具ではありません。視力を補う眼鏡と同じように、毎晩装着して初めて効果が持続します。
当院の睡眠時無呼吸症候群・いびきの診療でもお伝えしていますが、日本人は欧米人に比べて顎が小さい骨格です。肥満体型でなくても舌が喉に落ち込みやすいため、下顎の位置を前方で保つだけでも睡眠時の呼吸が楽になります。
CPAP療法とマウスピースのメリット・デメリット比較
「CPAPとマウスピースはどちらがよいか」は、無呼吸の重症度と生活環境で決まります。1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数(AHI)が30以上の重症では、気道を確実に押し広げるCPAP療法が第一選択です。一方で軽度や中等度、あるいは出張が多く機械を持ち運べない方にはマウスピースが向いています。
| 比較項目 | CPAP療法 | マウスピース(口腔内装置) |
|---|---|---|
| 適応の目安 | 中等度から重症(AHI 15以上) | 軽度から中等度(AHI 5〜30未満) |
| 仕組み | 鼻マスクから圧力をかけた空気を送る | 下顎を前方で固定して気道を確保する |
| メリット | 重症でも無呼吸を強力におさえる | 小型で電源不要、出張や旅行でも使える |
| 主なデメリット | マスクの圧迫感や機械の作動音がある | 重症には効果が弱く、顎や歯に負担がかかる |
CPAPを導入したものの「マスクが気になって眠れない」「毎月の受診が負担」と中断してしまう方も少なくありません。機械の装着が続かない場合は、中等度や重症であってもマウスピースへの切り替えを検討する価値があります。
マウスピース治療が受けられないケースと適応条件
手軽に見えるマウスピース治療ですが、誰でも作れるわけではありません。装置を歯にしっかり固定して下顎を前方に支える構造上、お口の状態によって作製できない場合があります。
以下に当てはまる方はマウスピース治療を受けられない、または先にお口の治療が必要です。
・残っている歯が上下で20本未満、あるいは装置を支える奥歯がない。
・重度の歯周病で歯がグラグラ揺れている。
・重度の顎関節症があり、口を大きく開けたり下顎を前に出したりすると激痛が走る。
・重度の鼻炎などで鼻呼吸がまったくできず、口呼吸に頼っている。
装置の力で歯が動いてしまったり、顎の関節を痛めたりするリスクがあるためです。まずは医科の検査でご自身の重症度を把握したうえで、歯科で歯や顎の関節が装置に耐えられる状態かをしっかり確認しましょう。
| マウスピース | CPAP療法 | |
|---|---|---|
| 対象の重症度 | 軽度〜中等度 | 中等度〜重度 |
| 仕組み | 下顎を前方に固定し気道を確保 | 鼻マスクから圧力を送り気道を開通 |
| 携帯性 | 小型・軽量で旅行先にも持参しやすい | 本体や配管があり持ち運びはやや不便 |
| 電源 | 不要(場所を選ばず使える) | 必須(コンセント等の確保が必要) |
| 適応条件 | 十分な残存歯と健康な歯周組織 | マスク圧迫感や装着音への慣れが必要 |
歯科でマウスピースを保険適用で作る手順と費用
睡眠時無呼吸症候群のマウスピース(口腔内装置)は健康保険で作製できます。ただし、医科による確定診断と紹介状(診療情報提供書)が必須であり、3割負担での作製費用は約1万円から1万5,000円です。
保険適用に必要な医科受診と紹介状の必須フロー
最初に歯科医院を受診しても、保険でマウスピースを作ることはできません。健康保険を適用するためには、内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来などの医科で検査を受け、睡眠時無呼吸症候群の確定診断を受ける必要があります。
医科で確定診断が出たあと、歯科宛ての診療情報提供書(紹介状)を発行してもらいます。その紹介状を持参して歯科医院を受診することで、初めて保険診療での装置作製が認められる仕組みです。
紹介状を持たずに歯科医院でマウスピースを作ると、全額自己負担となります。あとから医科を受診して診断書をもらっても、過去に作った装置の費用をさかのぼって保険適用にはできません。必ず医科を先に受診してください。
保険適用時の費用目安と自費装置(上下分離型)の違い
保険診療で作る装置と自由診療(自費)の装置では、設計や費用が大きく異なります。保険診療で作製するマウスピースは、上下の歯列がつながった一体型の構造が基本です。
| 項目 | 保険適用の装置(一体型) | 自費の装置(上下分離型など) |
|---|---|---|
| 作製の条件 | 医科の確定診断と紹介状が必須 | 紹介状なしでも作製可能 |
| 費用の目安 | 約1万円〜1万5,000円(3割負担) | 約5万円〜15万円前後(全額自己負担) |
| 構造と使用感 | 上下固定のため装着中は口を開けにくい | 上下が分かれており会話や水分補給ができる |
| 顎の位置調整 | 固定式(再調整には作り直しが必要な場合あり) | ネジなどで下顎の前方突出量を微調整できる |
保険適用の装置でも十分な気道確保が期待できます。装着時の違和感を減らしたい方や、下顎の位置を細かく調整したい場合には自費の上下分離型という選択肢もあります。
型取りから完成・装着後の微調整までの通院ステップ
型取りからマウスピースが完成するまでの期間は、約1週間から2週間です。歯科医院への通院回数は、完成後の調整を含めて2回から3回が目安となります。
STEP1
初診・口腔内診査と型取り
医科からの紹介状を確認し、虫歯や歯周病の有無を診査します。装置を支える歯の状態に問題がなければ、下顎を前方に誘導した位置を記録し、歯型を採取する流れです。
STEP2
装置の完成と装着・噛み合わせ確認(約1〜2週間後)
歯科技工所で完成した装置を口に合わせて微調整します。着脱の練習やお手入れ方法、就寝時の注意点を確認して持ち帰る手順です。
STEP3
装着後の経過観察と微調整
実際に数日装着して眠ったあとに来院します。起床時に顎の痛みや歯の締めつけ感がないかを確認し、噛み合わせの当たりを調整して治療を安定させる形です。
装置の作製後は、いびきや無呼吸の改善度合いを調べるため、紹介元の医科で再度検査を受ける流れになります。医科と歯科が連携を取りながら治療を進めることが重要です。

まとめ:いびきや眠気を放置せず医科歯科連携で早期治療を
睡眠時無呼吸症候群は、深刻な全身疾患や事故につながる怖い病気ですが、医科と歯科が連携することで身体の負担を抑えて改善できます。
睡眠時無呼吸症候群が疑われるときは、歯科ではなくまず内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来などの医科を受診してください。歯科で治療用マウスピース(口腔内装置)を保険適用で作るには、医科での確定診断と紹介状(診療情報提供書)が必須となるためです。
ポイント
- 放置すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる病気のリスクが数倍に高まります。
- 軽度から中等度の症状であれば、持ち運びもしやすい歯科のマウスピース治療が役立ちます。
- 保険適用で装置を作るためには、医科で睡眠検査を受けてから歯科を受診する手順が必要です。
起床時の疲労感やいびきが気になっているなら、まずはお近くの内科や耳鼻咽喉科で睡眠検査の相談をすることから始めてください。

よくある質問
- Q.睡眠時無呼吸症候群のマウスピースは市販のものでも代用できますか?
- A.市販のマウスピースはお湯で成形する簡易的なものが多く、適切な下顎の前方突出位置を固定できないため効果が期待できないばかりか、咬み合わせの悪化や顎関節症を引き起こす恐れがあります。医療機関で個人の歯並びに合わせて作製した精密な装置を使用してください。
- Q.CPAPを使っていますが出張や旅行のときだけマウスピースを併用できますか?
- A.医師の判断に基づき、自宅ではCPAPを使用し、電源が取れない場所や出張・旅行時のみマウスピースを併用する使い分けは可能です。ただし主治医(医科)による紹介状と治療方針の共有が必要になります。
- Q.マウスピースを装着すると顎が痛くなったり歯並びが変わったりしませんか?
- A.下顎を前に出した状態で固定するため、使い始めの数日間は起床時に顎の違和感や歯の浮いたような感覚が出ることがあります。多くは時間経過で軽減しますが、違和感が続く場合は歯科で削合や突き出し量の微調整を行います。
- Q.睡眠時無呼吸症候群と診断されたら運転免許はどうなりますか?
- A.診断されただけで直ちに免許が取り消されるわけではありません。適切な治療を受け、日中の眠気等の症状がコントロールされていれば問題なく運転を継続できます。治療を放置したまま居眠り事故を起こした場合は法的責任を問われる可能性があります。
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