院長の海老沢は睡眠時無呼吸症候群です
睡眠時無呼吸症候群の診断に至った経緯
思い返せば、はじまりは肥満かも
30代半ば。急に太りだしたわたしは体重が80kgになり、若い頃に比べて体重が10kg重くなっていました。
46歳。東京マラソンに参加。継続してトレーニングしても2-3kgしか痩せず、78kgくらいにしか落ちませんでした。かなり痩せにくい体になったなあと実感。
睡眠時無呼吸は、肥満に繋がる可能性があると言われます。いくら食べても太らず、痩せる体質だと思っていたわたしが急に太ったのは、今考えると、この頃すでに睡眠時無呼吸があったのかもしれません。
50代になりますます肥満
50代になると、体重はますます増え85kgに。
スポーツクラブに入り、ジムやプールで運動してもあまり変わらない。むしろ運動すると体重は増えていきました。これはかなり不思議に思いました。
また、近ごろはプールで泳ぐときの息継ぎがだいぶ苦しくなってきたことも感じていました。
その他の症状に気づく
その他にも、今考えると睡眠時無呼吸に関連していた症状なのではないか?と疑われる症状もありました。
たとえば、昼間の軽い眠気、セミナー中の眠気、昼寝がかなり深いこと、朝方目が覚めてしまうことなど。しかし、年齢のせいだろうと思い、なかなか睡眠時無呼吸とはつながりませんでした。
コロナが広がった昨年。診療所に備え付けのパルスオキシメーター(酸素飽和度計)を自身で使ってみることが多くなりました。
スタッフが測ると数値で99%とかなのに対し、私は95%くらい。ずいぶん低いなあと。
また、朝起きた時に軽い頭痛を感じ、血圧が高いのでは?と思い、自宅にも血圧計を購入。やはり朝はかなり高血圧だということがわかりました。しかし、病院に行って計測するとやや高めくらいの数値にしかならないのです。
睡眠時無呼吸を初めて疑う
あるとき、小学生の娘から「いびき」を指摘されました。
深夜に鼻をつままれ「うるさい」と言われ、翌日聞いてみると、毎日うるさくて眠れないことがあるとのこと。ここでやっと睡眠時無呼吸のことを思い出し、調べてみました。
まず、終夜で酸素飽和度が記録できるリングO2(リングオーツー)というものが発売されたので使ってみました。
これは、睡眠時無呼吸症候群の検査のうち、「簡易モニター検査」という自宅で行う簡便な検査のさらに簡易版といったものです。
夜間の酸素飽和度が腕時計型の機器に記録され、朝起きてから転送することで、スマホにわかりやすくグラフで表示されます。
検査結果を見ると、寝ている間にかなりの酸素飽和度の低下を複数回確認。
これは睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと、いよいよ、近くの医療機関を探して診断を受けることにしました。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠専門の医療機関を受診
睡眠専門の医療機関を受診しました。
睡眠時無呼吸症候群の検査には、以下の2種類の方法があります。
簡易モニター検査
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
簡易モニター検査は、持ち運べる検査機器の貸し出しを受けて自宅で検査するもの。終夜睡眠ポリグラフ検査は病院に宿泊して行います。
簡易モニター検査ののちに終夜睡眠ポリグラフ検査を受けることも多いようですが、わたしは最初から病院に宿泊して検査する方法を選択しました。
私の場合は、最終的に必ず本格的な検査が必要になると思ったからです。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸とは:
肥満、加齢、男性が重要な発症関連因子で、最も重要なのは肥満。
中枢性と閉鎖性がある。中枢性とは、呼吸の命令が出ない原因で起こるもの。循環器系などの病気との関連性が疑われます。
閉鎖性は、命令は出ているが、気道が閉鎖されていて呼吸ができない状態で起こるもの。
睡眠時無呼吸で問題になるものの多くは、閉塞性睡眠時無呼吸タイプです。
50代女性10%弱、男性15%程度。
睡眠時無呼吸の定義:
1時間当たりの無呼吸・低呼吸の回数 (AHI)の回数が5回以上で睡眠時無呼吸とみなされます。低呼吸とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。
重症度分類:
軽症:AHI = 5回以上 15回未満
中等症:AHI = 15回以上 30回未満
重症:AHI = 30回以上
睡眠時無呼吸の検査結果
わたしの検査結果は、重度の無呼吸があるという診断結果でした。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法は、以下のような方法があります。
CPAP
マウスピース装置(OA)
外科手術
いびき、軽度~中等度の無呼吸はマウスピース装置(OA)で十分効果がありますが、無呼吸が重症の方の第一選択はCPAP(シーパップ、経鼻的持続陽圧呼吸療法)となります。
しかし、CPAPは継続率が低く(やめてしまう人が一定数いる)、CPAPを試してみたが、違和感が強く装着できない方でマウスピースを試したところ効果がある例も多数報告されています。
わたしの場合、重症の睡眠時無呼吸ですので、ガイドラインからはCPAPによる治療の一択になります。
治療法の選択
いろいろ専門的な書籍を読んで勉強した結果、やはりCPAPによる治療が確実だと感じましたが、歯科医という立場からマウスピースによる口腔内装置(OA)による治療も体験しておきたいと思い、両方の治療法を併行していくことと決めました。
同様の病気にお悩みの患者様に対する有効なアドバイスにつながると考えたからです。
当院で睡眠時無呼吸の患者様にできること
専門医の紹介と簡易検査のアドバイス
2014年にブログ記事「睡眠時無呼吸症候群は怖い!」を書いていましたが、その時点で、わたしは自分が睡眠時無呼吸症候群の患者だとは全く気がついていませんでした。
思い返すと、わたしはもうその時点で睡眠時の無呼吸があったはずだと思います。中高年の男性だと20%弱が当てはまるはずですが、自覚している方は意外に少ないようです。
ちょっとでも気になる症状がある方に、患者となったわたしがアドバイスできることは多いと思います。
また、簡易検査の装置については、将来的に貸し出しも行えると良いなあと思っていますが、現時点では、専門医をご紹介するか、一般の方でも購入できる簡易的な機器についてアドバイスさせていただくようにいたします。
マウスピース型の口腔内装置の作成(保険外)
睡眠時無呼吸症候群の治療装置は、CPAPにせよ口腔内装置にせよ、
長期間に渡り継続して使用することと、毎日4時間以上の使用により、心不全などの循環器系疾患イベントが有意に減少し、死亡率が下がる結果につながる
というエビデンスが示されています。
睡眠時無呼吸の治療装置については、継続使用できることが非常に重要なことなのです。
口腔内装置については、専門医の紹介ののち保険の範囲内で製作できる上下一体型の装置もあるのですが、保険の範囲で製作できる装置は、わたし自身が使用してみた結果ではちょっと苦しく、違和感も大きいと思います。
苦しい装置では、結局継続して使用できません。
CPAPも同様に、装着が大変だという一面があり、合わない方がいらっしゃいます。
そのため、わたしが歯科医としてできることは、できるだけ長い時間、長期間にわたり使用できる装置をご提案することだと考えています。
18万円(税込¥198000)と、やや高価になりますが、そういう意味でもっともおすすめできる上下分離型の「ソムノデント」という装置をお作りしています。
ソムノデントとは
【 ソムノデントの特徴 】
・ 世界で最も多く使われて、その有効性を実証しているエビデンスが最も豊富な上下分離型の口腔内装置 (マウスピース)
・ 内層(歯列側)には独自に開発された高品質のソフトポリマーを採用 (やわらかく、保持力と快適性を持つ)
・ 顎位を微調整するためのスクリューや替えのゴムを装備(装着後の調整が簡便)
・ 製品保証 30ケ月
【 ソムノデントのメリット 】
・ 上下分離型なので装着時の拘束感を軽減し、装着中に口を開いたり、会話や水を飲むこと、咳やあくびも自由にできます。
・ 何より快適に長期使用いただけます。
・ 上下分離型でかつ下顎の位置を調整できるので顎関節への負担を最小限に抑えられます。
・ スクリューを前後させるまたはゴムを変えることで下顎の前方位を柔軟にかつ簡便に調整できます。
・ 装置は手のひらに載るほど軽量、コンパクトです。ご家庭だけでなく、出張や旅行などにも手軽に持ち運びができます。
・ 装着後30ケ月の製品保証がされていますので、長期間安心してお使いいただけます (1部除外条件あり)
【 ソムノデントのデメリット 】
・ 顎関節、咀嚼筋の痛みや違和感 (治療開始早期に多い、上下一体型より軽減される)
・ 起床時の咬合異常 (治療開始早期に多い、上下一体型より軽減される)
・ 前歯の開口など長期的な不可逆の歯の移動
・ 保険適用外
・ 唾液過多、唾液減少
・ 歯や歯茎の痛みや違和感
【 ソムノデントがお勧めできる方 】
・ 激しいいびきにお困りの方
・ CPAPが使用困難、又は抵抗のある方
・ 上下一体型のマウスピースがうまく使えない、継続使用ができない方
・ 移動・出張の多い方(CPAPの持ち運びの問題)
・ 旅行先でお仲間からいびきや無呼吸を指摘された方
結局、ソムノデントとCPAPどっちが良いか?
・ CPAPなどの治療装置は一生使用するのが前提。使い始めたら終わりはない。しかしCPAPは様々な理由で脱落率が高い。
・ マウスピース装置は脱落率がCPAPより低く、CPAP使用から移行する人も多い。
・ 使用時間の長さが優位に心血管イベントの低下に関連するが、使用率においてはCPAPよりマウスピース装置が有利である。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)はぜひ治療すべきです。治療しないと、心不全などの循環器系疾患イベントが有意に上昇し、死亡率が上がることがわかっています。
また、治療しないと肥満がなおらないから、SASの状態も改善しないという悪循環から脱せないことになります。
睡眠時無呼吸の治療は長期間に渡り、「継続」することが最も大事なことが明らかになっています。(高いエビデンスレベル)
重症の場合はCPAPが第一選択なのですが、継続性も考慮した場合には、人によってはソムノデントによる治療の方が合っているケースもあるようです。
また、エビデンスレベルは高くないが、重症患者でもソムノデントによる治療で大きな効果が上がっているケースがあります。
ガイドラインに従えば、口腔内マウスピース装置であるソムノデントは、軽症から中等度適用。CPAPは重症に適用するというのが、やはり一般論です。
しかし、口腔内マウスピース装置とCPAPの効果の違いは、十分な研究データは不足しているものの、論文レベルでは差がありません。
医師は、重症の治療にCPAP1択(バイアスの可能性あり)と考えています。口腔内マウスピース装置製作会社は、経験上口腔内マウスピース装置によって重症例が改善していること(バイアスの可能性あり)を認めています。
CPAPの方が多くのエビデンスがあり、重症の方にはやはり第一選択と言えますが、明確に決定を支持するエビデンスまでは未だにありません。最終的には、各個人の状況や経過、好きずきによって自分で選択するしか無いというのがわたしの結論です。
わたしのように両方試してみて、自分に合う方法を探すというのも、一つの解決法になるかもしれません。
もちろん、軽症~中等度の方には、ソムノデントによる治療がもっともおすすめできる選択肢です。
ソムノデント製作の流れ
当院のソムノデントでは、マウスピース矯正装置・インビザラインと同様、型取りをしないで、口腔内スキャナーiTeroの使用による製作が行なえます。型取りに比べて、清潔で正確な装置作製が可能です。
専門医による診断を受けた上での製作を推奨しますが、何らかの理由で難しい場合は、簡易モニター検査などをしていただいた上で、ソムノデント製作を行っていただく方法もあります。
その場合は、アドバイスさせていただきますので、お気軽にご相談ください。