海老沢歯科医

わたしが聞いた磯田一郎氏の話 ~「住友銀行秘史」を読む~

楽天の副社長を務められたことのある國重惇史さんが書かれた「住友銀行秘史」がベストセラーになっているようです。
戦後最大の経済事件と言われているイトマン事件のことが書かれています。
主人公である元住友銀行の故磯田一郎氏を、大学を卒業してすぐに修業をはじめた丸の内のパレスホテルにあった歯科医院で、何度かお見かけしました。
当時は「住友銀行の天皇」と呼ばれていて、すごく偉い人だと聞かされましたが、事件等についてはまったく何も知りませんでした。

 

イトマン事件は、1991年の元旦、朝日新聞が出した絵画取引の不正疑惑スクープ記事から、徐々に明るみになってきたようです。
磯田氏が院長先生と話すのを脇でただ聞いていたのは1991年春ですから、まさに事件がだんだん暴かれていたころでしょうか。

当時の磯田氏が話していたことを今でも覚えています。
「バブルが崩壊して、数年でまた回復すると考えている人が多いが、もう日本は終わりだ。30年後も景気は悪いままだろう。もしかすると100年悪いかも。」
過激なことを言う人だなあと、ぼんやり感じたくらいでしたが、実際に25年が経過して振り返ってみると、言ったとおりでしたね。そういう意味ではやっぱりすごい人だったと言えるのかも。

もう日本は終わりだというフレーズが、当時の彼にとってどういう意味だったのか、この本を買ってから考えています。
戦前に銀行に入り、戦後の混乱期から高度成長期を銀行員として過ごし、清濁併せ呑む人生を送ったと思われる彼の人生観からすると、時代が変わったことに対する悲観だったのかとも。
「水清ければ魚棲まず」と話すのも聞いた気がしますが、それはわたしの記憶違いだったかもしれません。

しばらくして、「国会に呼ばれたので」とキャンセルの電話が入って、その後は一度も来院しませんでした。
じっくり、ベストセラーを読んでみます。